測定機屋さんが語る分野に思えますがJANOG57の会話で試験方法の基本が全く周知されていないように感じたので語ってみます。
言うまでもなく、通信試験は重要です。一方、試験に必要な機材と時間はある意味無限です。考えれば考えるほど、高価な機材が必要になり作業時間の予測も付かなくなり彷徨ってしまう事でしょう。ここでは、簡易的ではあるが現実的な機材と作業時間で行える回線の試験方法は何かを考えてみます。単に「問題なし」ではなく、その時のデータを詳細に記録することが障害時の比較対象としてとても重要です。
「通信」ですので、対向で機材を設置して試験するのが当たり前ではありません。長距離でない限り、片側を何等かの形でloopback。つまり受け取った信号をそのまま反対側の芯で送り返す設定が基本です。
この方法では、送受それぞれの品質を計測することはできませんが運用後の通信品質の確認であれば十分です。また、光信号を単純に折り返した場合は減衰量が倍増えますが短距離であればそれくらいはそもそも余裕が無ければ運用できません。
試験する片側のTX/RXをパッチコードやloopbackアダプタで折り返し接続します。機材に余裕がある場合には一度に全部の回線に折り返し接続をしてしまえば、あとは対向側だけで全ての作業ができるので多少遠隔地でも人手を別に配置する必要はありません。
まずトランシーバーのTX/RXを直接loopbackします(local loopback)。長距離用のAPD素子等を用いた高感度受光では受信限界を超えて受信素子を痛める事がありますが10km以下の製品であれば直接でかまいません。
この時にスイッチのステータスでlinkupするか。送信及び受信のDDMの値を記録します。もし、linkupしなければ線路以前の問題です。次に、対向側がloopback(remote loopback)された接続に変更します。そして、同様にlink statusとDDMのTX/RXを記録します。
記録したRXの値の差が伝送路のロスでありremote loopback時のRXの値が選択した光トランシーバーの仕様上の下限を下回っていない事を確認します。
DDMによって測定される値の精度は高くありません。相対値はまずまずですが絶対値は仕様上プラスマイナス3dbの誤差は許容されているからです。また、光トランシーバーの個体差に影響されるのも測定としては好ましくありません。光パワーメーターはそれほど高価ではありませんし、本来は定期的な校正が必要ですが、校正なしでもそれほどズレることはありませんので常備しておきたい機材です。
光パワーメーターがある場合は、光トランシーバー送信側の直接の測定値とremote loopback経路を経由した値を測定します。その差が、伝送路のロスであることは上記と同じです。
OTDRがある場合、そもそもremote loopbackの必要すらないのですがトータルのコネクタ部の試験も行えます。実際に、光ファイバーそのものに問題があることは稀で光コネクタの端面の汚れ、研磨不良、接続不良が障害の殆どです。OTDRがあればコネクタ接続の個所数、反射の値も測定できます。最近は、安価なOTDRもありますのでそもそもすべての現場にOTDRがあるべきとは感じますがそれでは本記事の存在意味を否定してしまいます。
ポート一つを備えたトランシーバーテスターが一台あればかなりちゃんとした試験ができます。ポート一つの機材が一台で済むのがとても重要です。800G対応テスターとか2ポート物はとっても高価ですから。
一般に、トランシーバーのテスターにはbit単位での伝送を行うモード(BERT)とL2 frameやL3 packetで行うモードがあります。光トランシーバーの担当としてはbit単位で行う試験が評価の基本です。試験手順は同様に光トランシーバーのTX/RXを直接折り返した場合とremote loop back接続を測定し差を検証します。
BERTの試験時間は5分間行えば25gbps回線で10E-12以上の測定ができるので十分でしょう。数時間行ってもあまり意味はありません。回線数が多い場合でも1分は最低必要に思います。
最近はFEC機能を内蔵した光トランシーバーもありますので、その場合はFEC機能を無効にする制御を行う機能を備えている必要があります。その場合、短時間でも複数のビットエラーが観測される事が多くなりますがその結果と仕様との差が重要でありエラーゼロが正しい測定結果とは限りません。
optical remote loopback試験の欠点はスイッチによるpingの試験が無意味であることです。linkup stateにならなければ該当L3インターフェースにpingは通りませんが、remote loopback接続でlink upした後であってもpingのデータはその経路を経由しないからです。linkupの確認しか意味がありません。
他に使える芯があれば組み合わせの変更で特定する事ができます。利用できる芯が二芯しかない場合は。OTDRかな?
伝送路の評価としてはBER(Bir error rate)が代表的な指標ですが、frame loss / packet lossを確認したくなる事もあります。optical loopbackでframe lossの測定ができる測定器もありますが、ここではremote側にL2のframeの宛先MACアドレスを変換して送り返す機器を設置した場合です。伝送路というよりL2の機器か途中に入ったL2サービスの評価ではありますが単純な光だけの経路であっても測定結果は喜ばれます。
かなり蛇足ではありますが、L3パケットの宛先を書き換えで送り返す機器をremote側に設置して試験する方法です。基本的にはL2の試験と同じですがARPの設定に注意が必要です。通常運用しているネットワークにはトラフィック以外の管理用のパケットも流れています。いわゆる「ワイヤーレート」伝送能力の限界値を図る為には管理用パケットを止める必要があります。その分、通常はarpによって自動的に学習されるnext hop MAC addressを手動で設定する必要があります。ルーティング維持のパケットさえ止めてしまうと試験の意味がなくなるので通常はワイヤレートよりも抑えたデータレートで試験すると思います。
loopback機能はかなり測定器としては一般的な機能ですので、他機種間でも試験可能です。
| DDM | +パワーメーター | OTDR | BERT | OSA | |
|---|---|---|---|---|---|
| loss | OK | OK | OK | ||
| 距離 | OK | ||||
| 反射 | OK | ||||
| コネクタ数 | OK | ||||
| BER | OK | ||||
| frame loss | OK | ||||
| OMA | OK |
ネットワーク機器そのものに様々な測定機能を備えたものがあります。運用状態から試験に遠隔で切り替えができたり。確かに便利です。その代わり高価になりますし、測定の原理そのものは同じですので外部の測定器による測定手法を知らないと高機能機材を使うこともできません。測定器を操作する事により携わっている技術そのものを深く理解する事にもなりますので測定器とは仲良くしましょう。
文章を記述しながら、なにを今更こんな基本的な事をを思うのですが。どうも、最近の技術者と会話しているとその基本が怪しい。教科書的な資料の存在が無いのが問題なのでしょうか。
端面清掃、光を覗かない、端面に触れない、使わない端子にキャップする、コネクタをきっちり差し込む