各速度品種で初期から定義されたSR/LR以外のtype codeはSFFの仕様書通りにトランシーバー側に設定しても運用上問題が発生する事は過去の記事にも書きましたが、特に機器側の実装が最新のファームウェアであっても最新のSFFを参照した仕様になっていない事が多い10G SFP+は問題です。

  • A0h byte 3: 10G Ethernet Compliance Codes
  • A0h byte 36 : Extended Specification Compliance Codes
media spec byte 3 byte 36 comment
IEEE 802.3ae 10GBASE-SR 0x10 0x00 10G SR、議論の余地なし
IEEE 802.3ae 10GBASE-LR 0x20 0x00 10G LR、議論の余地なし
IEEE 802.3ae 10GBASE-ER 0x80 0x00 10G ER、議論の余地なし、C band
IEEE 802.3cp 10G BiDi 10km 0x00 0x00 0x37が定義されたのが製品出荷開始後
IEEE 802.3cp 10G BiDi 20km 0x00 0x00  
IEEE 802.3cp 10G BiDi 40km
(WST-SFP+BX4E)
     
MSA 10G BiDi 40km 0x00 0x00  
MSA 10G BiDi 80km 0x20 0x00 10G LR偽装
MSA 10G BiDi 100km C band 0x80 0x37 10G ER and BiDi
IEEE 802.3cp 25G BiDi 10km 0x00 0x00  
IEEE 802.3cp 25G BiDi 40km
(WST-S28-BX4E)
     
MSA 25G BiDi 20km 0x00 0x00  
MSA 25G BiDi 40km 0x00 0x00  
MSA 25G BiDi 60km 0x00 0x00  

 

誤認識でも動作する事を優先するか

SFF-8024 Rev 4.9以前準拠であれば0x00/0x00、REV 4.9以降であれば0x00/0x37で無くてはなりません。

しかし、そもそもトランシーバーの伝送種別を機器が正しく認識する必要があるのかという命題もあります。伝送種別固有の設定パラメータが無いのであれば動作する上では差はありません。運用者が受信の光レベル等が妥当であるかを判断するには重要な要素ではあります。

この考え方を前面にするのであれば、新しい伝送種別は全て無視して既存の伝送種別に誤認識させる方針となります。実際の製品での実装でも1G 固定波長DWDMでは1000BASE-LXの値を設定するのが一般的です。10G BiDiは全て0x20/0x00にしてしまうと言う事です。

複数属性の設定の弊害

SFF-8472にて定義されている伝送タイプは対応bitが割り当てられる形式ですので複数の属性設定が可能です。また、bytes 36はSFF-8024 table 4-4に元ずく別なフィールドですので重複して設定する事が可能です。

複数の属性を設定した時にどちらを優先するかはSFFには規定がありません。1/10G両用の製品に於いて両方の属性を設定した場合、機器側が1Gを優先してしまい10Gとしての利用が出来ないため、10Gだけの属性設定を行った製品もあります。

10G LRと10G BX両方の属性を設定した場合10G LRの値を優先的に認識してしまえば誤認識となります。しかし、10G BXを知らない機種でかつ不明なタイプでの動作を停止してしまう機器が存在する事を考えると重複して10G LRの値を設定するのが回避策になります。

機器側実装タイプ別type codeの設定例

3 36 10G BiDi対応機 不明タイプ許容型 不明タイプ排除型
0x00 0x37 正常に10G BiDiと認識動作 不明なタイプとして動作 動作せず
0x00 0x00 不明なタイプとして動作 動作せず
0x20 0x00 10G LRと誤認識させて動作
0x20 0x37 正常認識動作 10G LR誤認動作

WSTの方針

弊社としては極力最新のSFFの仕様に準じた製品提供を心がけておりますが、標準化仕様が定まる以前より出荷をしている製品も多く。2023年10月現在。標準出荷品に設定されている値は冒頭の表の通りです。事前評価をいただいた結果値の変更を必要とするケースもあり、個別に対応させて頂いています。

BXかBRか

BiDiを示す機器号として"BX"を使うか"BR"を使うか。SFF-8024では"BR"、IEEE 802.3cpでも"BR"です。しかし、歴史的にBiDiに関する標準化の議論は開始が遅くそれ以前に製品を市場に投入していたベンダーの多くは"BX"の表記をBiDi製品に使用しております。WSTとしても既存製品との整合性を考え"BX"を基本的に採用しています。

距離種別をどう表すか

同様な問題に想定距離を示す数値を二桁にするかどうか。10G 40km BiDiを「10G BX4」とするか「10G BX40」と表記するか。IEEE 802.3cpは二桁表示です。

仕様波長をどう表すか

SFF-8024 table 4-4にはBiDiを示す"BR"は各速度別に一つしか定義されていません。想定伝送距離やそれに伴う仕様波長の差を表すことはできません。これについてはbyte 14のSMF lengthやbyte 60-61のWavelength領域にて送信波長を示す事になるでしょう。

100G BiDiの場合

WSTでは2023年夏よりQSFP28 100G BiDi製品の出荷を開始しております。実は、最新 Nov 24,2022発行のRev 4.10 SFF-8024には100G BiDiの値は21h 「100G PAM4 BiDi」が設定されていますが100G FR1/LR1にはmedia FECの種別も別に設定されているのでこれに準じて今後二種類設定されるのでしょうか。

  QSFP28(no FEC) SFP112(HOST FEC)
100G DR 25h  
100G FR1 26h 2Ah
100G LR1 27h 2Bh
100G PAM4 BiDi 21h 21h?

 

SFF-8472 table 5-3
A0h bytes Bit Description
3 7 10GBASE-ER
3 6 10GBASE-LRM
3 5 10GBASE-LR
3 4 10GBASE-SR
SFF-8024 table 4-4
code Description of Module Capability
02h 25GBASE-SR
03h 25GBASE-LR
04h 25GBASE-ER
37h 10GBASE-BR
38h 25GBASE-BR
39h 50GBASE-BR
  • Rev 3.8
    • Added 25GBASE to 03h and 04h 100GBASE
  • Rev 4.9 24-May-21
    •  Added codes 37h, 38h, 39h in Table 4-4 for 10GBASE-BR, 25GBASE-BR, 50GBASE-BR

MSAとIEEE 802.3cpの波長の違い

BiDiのIEEE仕様であるIEEE 802.3cpはMay 2021発行とかなり最近であり、それ以前に市場に出荷されていた製品とは採用して居る波長が異なります。波長が異なりますと相互接続が不可能ですのでご注意ください。

  MSA(legacy) IEEE 802.3cp
10G BiDi 10/20/40km 1270/1330 nm 1270/1330 nm
10G BiDi 80km 1490/1550 nm  
25G BiDi 10km 1270/1330 nm 1270/1330 nm
25G BiDi 20km 1270/1330 nm 1289/1314 nm
25G BiDi 40km 1270/1310 nm 1289/1314 nm
25G BiDi 60km 1270/1310 nm  
50G BiDi 10km   1270/1330 nm
50G BiDi 20/40km   1289/1314 nm

 

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