Data Center Japan 2026に出展し頂く質問の中に「シリコンフォトニクスは採用していますか?」と聞かれる事があります。あまりに広い内容のキーワードで質問されても簡単に答えられずに困ってしまいます。「シリコンフォトニクスの何をお知りになりたいのですか?」と確認をしてもほとんどの場合回答は得られません。各メーカーが安易に自社の先進性を示すためにキーワードを振り回している弊害だと思います。「AIを採用しています!」よりはマシですが。
広義のシリコンフォトニクスが示す意味は、旧来は電気回路をシリコンウェハー上に構築していた手法で、光を扱う素子を構築するものです。ですので、様々な機能素子が含まれ受光素子や発光素子といった大昔から存在していたものまで含まれます。
2026年の高速光通信に限定して考えると、光変調素子が一番の注目点ですので。”おそらく”ご質問頂いた目的も「シリコンフォトニクスによって構築された光変調素子を採用していますか?」であると推察します。
レーザー光による通信は電気で入力された信号を何等かの形で光の変化に変換して送り出し、受信側ではその逆を行うことで電気信号を取り出します。基本的な”変化”は光の強さを変えることで光のON/OFFを電気信号に合わせて行います。この時に発光そのものをON/OFFする方法と発光は連続しているもののそれを遮蔽するかしないかで結果的に受信側に届く光のON/OFFを実現する方法が考えられます。
25G per laneまでに使われているNRZ変調方式では発光そのものをON/OFFするのが一般的でした。しかし、50G per laneで採用されたPAM4方式は中間の光の強さも情報として区別します。発光素子の光の強さは、入力される電力に比例して強弱が変化するとは限りません。温度や素子の個体差によってもその比例する直線性は影響を受けます。それに対して、遮蔽する方式は安定して信号の減衰量を実現できます。”中間"を実現する安定度は遮蔽方式が有利です。
遮蔽方式のメリットとして、ファイバー多重を行う場合。多重数に関係なく光源を一つで済ますことができるのも大きな要素です。
遮蔽方式のデメリットは最大光出力が変調機のロスによって少し低くなることですが光源の出力を上げることで帳尻を合わせる事が可能です。よって遠距離には適していない方式です。
現在はPAM4変調は遮蔽式が主流でそれを実現する素子がsiph modulatorです。実装手法は標準化の仕様書に明記はされておらず各製造社によって異なる可能性もありますが実際上はほぼすべての製造会社が同じ方式を採用していますので、なんら差別化要素ではありません。
modulator以外で話題になるとすれば、光の分光等をPLC AWGではなくsiph AWGを採用していることも考えられます。siph AWGはPLC AWGよりも小型であり他のsiph機能と一体化した素子が構築できる優位性があります。2016年頃から製品に使われ始めていますので2026年時点で差別化要素にはなりにくいと思います。
実際に製品を設計製造した部門は、特に差別化できる要素であるとは認識していない実装技術を広報部門が他社研究を行わないままに差別化要素として強く対外アピールすることはよくある事ではあります。
siphのキーワードが数多く見かけるようになった理由にCPO方式を採用した製品計画が最近多く発表されている事があると思います。CPOはファブリックチップから直接光によって通信しますので、CPOから発光しているとの判断し放熱や故障率を心配する質問もありました。実際はCPOは光の遮蔽回路(siph modulator)がファブリックの周囲に配置されていて光源はフロントパネルに差し込まれた外部光源モジュールから導かれています。つまり、光の強さに比例してCPOは発熱もしないし、光源が故障してもCPOを交換する必要はありません。
2018年にciscoがLuxteraを買収して時にsiphのキーワードは脚光を浴びました。Luxteraは2007年に世界初の商用シリコンフォトニクス製品を発表したとされており。ciscoが買収する狙いがその技術の獲得であると広く報道されたためです。