光トランシーバーは基本的にはとても単純な部品構成です。電気的な信号をレーザー素子によって送信そして受信するだけ。”賢い”機能は必要ありません。

しかし、波長多重を行う製品ではTECと呼ばれるレーザー素子の温度を一定に保つ機構を備えており、これがかなりの複雑な機構でありそれに伴い消費電力も多めです。

 

レーザーの発振素子は、特定の波長だけ出すのが特徴です。この時に、どれだけ不要な波長を出力出ず、鋭く目的の波長だけど出すかが重要です。また、この波長はレーザー素子の動作温度の影響を強く受けます。

同じ物理構造であっても動作温度が異なると、波長が変化してしまうのです。そのため、隣接する波長との間隔が狭い場合など高い波長の安定性が要求される場合にはTEC(Thermo Electric Cooler)と呼ばれる温度を一定に保つ機構が必要になります。

同じような波長の安定度を保つために温度管理を行う手法はTXCO(温度補償水晶発振器)でも行われていますが、TXCOは発熱素子により一定の高温状態を保つのに対しTECは発熱だけでは無く冷却機構も備えています。

そして、発熱より冷却の方がより多くの電力を必要とするのです。

レーザー素子の温度を摂氏35度を保つようにするのか50度を保つようにするのかは製品や対象とする波長によって様々ですが。一般に保証されている70度、もしくは屋外での利用を想定している産業温度範囲の85度までの環境温度に対応した製品は、高温時には冷却機構が働いている事になります。

この時の消費電力は、光トランシーバー全体の消費電力の40%を超える事もありまた高温の環境であればこそより高い冷却性能を実現するために高消費電力を必要とする矛盾した状況に陥ります。

高い冷却性能を実現するためには高い消費電力が必要ですので、その駆動回路等の発熱も多くなり自らの発熱を上回る冷却能力が必要になるからです。

もちろん、物理的な配置の工夫や断熱材等も利用し光トランシーバー全体の温度と波長に影響があるレーザー素子の温度を隔離するなど工夫はされています。しかし、SFPのパッケージ容積は必ずしも大きくなく困難な条件です。

環境温度とトランシーバーのケース表面温度

測定によって得られる”数字”は扱いに注意が必要です。測定環境によってその数字の意味する重みが大きく異なるからです。特に、温度測定の数字は扱いが難しい。

製品の性能試験を行うときに、我々製造メーカーは光トランシーバーのケース表面温度が仕様の最大温度、例えば85度になる試験環境を用意します。この時に、DDMによる温度測定値もほど85度になります。この試験環境では、85度を維持する制御が行われるのが一般的です。

トランシーバー自体の発熱の影響が「ゼロ」なのであればシンプルです。

実際の運用環境では、周囲の環境温度に対しトランシーバー自身の消費電力に伴う発熱量とそれを放熱する能力が大きく影響します。

我々の実験結果では、光トランシーバーの機種にも依存しますが。放熱を行うケースにも接触せず光トランシーバー単体で動作し、かつ放熱を促進する空気の流れがほぼ無風状態の場合は環境温度に対し15度程度光トランシーバーのケース表面温度が高くなります。

つまり、85度が動作保証温度の製品であればこの状況での許容動作環境温度は85マイナス15の70度言う事になります。

光トランシーバーを供給している立場からすれば、トランシーバーが挿入されるイーサネットスイッチ等は保証しているトランシーバーに対する供給電力に対しバランスする放熱設計がされていることを期待しています。つまり、機器の放熱能力により光トランシーバー自身の放熱は相殺され周辺温度と光トランシーバーのケース表面温度の差は極めて少なくなる環境です。

 

実際に様々な状況で使われているイーサネットスイッチは供給電力に見合う放熱能力はありません。また、機器自体の放熱による光トランシーバーの周辺温度が室温よりも高くなることも一般的な状況です。

その結果、室温が50度、機器の内部温度が80度、放熱能力の不足により光トランシーバーのケース表面温度が90度を超え正常な動作が行えないケースが発生します。

日本国内でも最高気温は摂氏41.1度であり、屋外に設置された密閉ケースの中に収められた機器の環境温度が50度近くになることは十分想定されます。この時に、85度が保証温度の光トランシーバーが正常に動作するかどうかは、トランシーバーが挿入される機器の冷却特性次第です。故障率の低減を狙ってファンレスでエアーフローがない機器等では光トランシーバーの表面温度が85度を超え波長の逸脱や出力の減少を招く可能性は高いと言えるでしょう。

IT技術は整備された屋内に留まらず様々な分野で使われています、ますますこのような過酷な環境での温度管理の見積もり及び検証が重要です。


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