製品開発の現場では400G SR8は既に終了。400G DR4もあとは工場の生産体制の確認を出荷検査の確立なので開発側としてはほぼ終了。
2019年に入って取り組んでいるのは400G FR4です。
同じ距離レンジとしてはIEEE FR8とMSAのCWDM8がありますが、何故FR4を優先しているのか。
1:周波数グリットがCWDM4だから
波長はO bandのCWDM4です。つまり、光の合波、分波の部分は変調方式の違いは基本的には影響しない部品なので100G CWDM4と同じ部品が使えます。100G CWDM4は弊社の主力製品でありかなりの数の生産をしていますので部品調達コストも有利です。そもそも、40G LR4と同じであり時間的にもこなれています。
レーザーの波長安定性も温度補正を要求されません。
これに対しCWDM8は同じGRID間隔なので温度補正が不要なのは同じですが過去あまり使われたことがない部品です。CWDM GRIDは1GではC bandではメトロのネットワークなどで多く使われCWDMの光学製品も数多く作られました。しかし、当時は減衰量の観点からO bandはあまり使われなかったのです。
cisco社の製品ラインナップでも8-channel (1470, 1490, 1510, 1530, 1550, 1570, 1590, and 1610)であり。O bandは含まれていません。
2:レーザーが4波だから
シングルモードのトランシーバーではレーザーの数はコストと消費電力に大きく影響します。温度補償付きであれば特に重要です。その点、FR8は不利です。
4波の欠点はGEAR BOXと呼ばれる信号合成回路が必要なことです。QSFP-DD(QSFP56-DD)は通信機器と56Gbps x 8 laneでデータの受け渡しをします。それをそのまま8lane で光に変換すれば良いので400G SR8は作りやすいのですが。FR4ではそれを二本まとめて一本にしてから変換しなくてはいけません。受信側では逆変換が当然必要です。
要求される動作は至極単純なのですが56Gbpsの高速回線ですのでそれなりの配慮が必要です。
3:PAM4変調に目途がついたから
2018年春の段階ではCWDM8が有力と考えていました。それはPAM4の扱いがまだ見通せなかったからです。同じ変調速度で二倍の伝送容量を実現するPAM4は光の強さの差で信号を区別する必要があります。従来の光通信は光を感知できたができないかのデジタル的な判断ができればよかったのですが、強さの差、それも直線性と言いますが偏りが無く強さを認識できる必要があります。
この直線性は二値のNRZ変調の時代でも乱れの少ない信号を作り出すためには必要でしたので送信側では考慮されていましたが、受信側では絶対的な感度が優先されあまり問題視されませんでした。
また、強い時と弱い時を判断すると言う事は実質弱い時を検出することが最低感度となり従来と同じ絶対感度ではマージンを失う事になります。(4.8dB)
このような課題に対して、解決策が見えてきたのはSR8向けに開発したPAM4回路でした。レートの違い、波長の違いはありますがSR8用のPAM4回路の性能及び実現コストが確定した事により。FR4用PAM4の実用性も見えてきました。
そうなると、PAM4を使わないがレーザーを8波使うCWDM8と消費電力及びコストの比較になります。CWDM8用の光部品のコストがそれほど安くならない事もありFR4が優位との判断になりました。
400G 中距離トランシーバーの部品上の違い
FR8 | CWDM8 | FR4 | LR4-6(cu) | |
---|---|---|---|---|
レーザー数 | 8 | 8 | 4 | 4 |
波長保証回路 | 有り | 無し | 無し | 無し |
光GRID | LAN WDM8 | CWDM8 | CWDM4 | CWDM4 |
GEARBOX | 無し | 無し | 有り | 有り |
PAM4 | 有り | 無し | 有り | 有り |
FECの処理
GEARBOXによるLANE速度の変更を行う場合はFECの処理が問題となる。QSP28実装の100G FR1ではHOST側ではFEC無しで4対1のGEARBOX後にFEC処理を行う。つまりトランシーバー内にFECのencode/decode能が必要であり消費電力とコストの上昇の要因となる。QSFP-DDではFECはMUSTなので最悪のケースはトランシーバ内にてFECのDECODE-GEARBOX-ENCDODE処理が必要になるが2対1のGEARBOXではFECの処理ブロックの構成に変更が無く、FEC処理にトランシーバーが関与する必要が無い。
broadcom BCM87400
2018年11月に発表された、PAM4と50G/100G grearboxが統合されたチップ。400G DR4/FR4/LR4を作るうえで要点とも言える要素を実現する。
10Km対応 400G eFR4
フロア内及び建物の垂直方向に展開するだけであれば、2Kmの仕様で十分ですが。隣接する建屋に対して引くのであれば10Km対応が必要になります。果たして、FR4の基本仕様で10Kmは可能なのでしょうか。
この距離で問題になるのは光の減衰量よりも光ファイバーによる分散の影響です。光ファイバーでの信号の振幅はその周波数帯域に対して極めて狭いものですがそれでも幅があります。振幅幅の低い側と高い側の波長の差が伝送上の差になり結果的に信号波形が乱れてしまうのです。
この問題は振幅が広く、つまり変調速度が速くなるほど影響が大きくなるため。25G BAUDの変調速度を必要とする場合は光の減衰が少ないC bandではなく、分散特性の良いC bandが使われています。
100Gで40Kmを実現する100G ER4はO band LAN WDM波長グリットで分散ゼロの1310nm近辺に密度高く4波長を並べる事により分散の影響をほぼゼロとしています。400G LR8も同様の手法ですが8波ですので分散ゼロの窓をはみだしています。ただし変調速度は28G baudです。
FR4は53.125G baudですので振幅は倍、
Positive dispersionb (max) 6.7 ps/nm
Negative dispersionb (min) -11.9 ps/nm
1270nmの10kmにおけるNegative dispersionは、-50 ps/nm程度なのでそのままでは無理
2kmでの結構ギリギリ
何らかの分散保証を追加しないと難しいと思われます。
100G LR4/ER4 | 1295.53 | 1300.05 | 1304.58 | 1309.14 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
400G FR8/LR8 | 1273.55 | 1277.89 | 1282.26 | 1286.66 | 1295.56 | 1300.05 | 1304.58 | 1309.14 |
400G FR4/eFR4 | 1271 | 1291 | 1311 | 1331 | ||||
400G CWDM8 | 1271 | 1291 | 1311 | 1331 | 1351 | 1371 | 1391 | 1411 |
シングルモードファイバーの分散の値
シングルモードファイバーも製造しているメーカーか型式の違いにより様々な特性があります。分散の値も差があります。
ITU-T G.652での調査結果。2018-04-21 8社の値を公開している。
(ITU-T Rec. G.652 (11/2016) Characteristics of a single-mode optical fibre and cable)
ps(nm.km) min | max | min | max | min | max | |
---|---|---|---|---|---|---|
1270 | -4.96 | -2.35 | -4.82 | -2.83 | -4.74 | -3.14 |
1280 | -3.99 | -3.56 | ||||
1290 | -3.05 | -0.77 | ||||
1300 | -2.12 | 0.00 | ||||
1310 | -1.23 | 0.91 | ||||
1320 | -0.35 | 1.81 | ||||
1330 | 0.45 | 2.68 | ||||
1340 | 1.19 | 3.53 | ||||
1350 | 1.92 | 4.37 | 2.10 | 4.29 | 2.23 | 3.94 |
CWDM8のDispersion許容範囲
53.125 baud NRZ
Positive dispersion(b) (max) 96.4 ps/nm
Negative dispersion(b) (min) -59.3 ps/nm
何らかの補正技術を前提としていると思われる
O bandシングル波長で80Km
派生して、一波長それもゼロ分散点である1310nmを使う100G FRは分散を考慮しなくて良いので減衰だけクリアすればいくらでも距離が伸ばせそうです。ただし、C bandに比べてO bandは減衰量が大きい。
1310nmでの減衰量が0.3dB/Km程ですので。80Kmだとケーブルの減衰だけで24dB。送信でプラス10dBm出して受信側ではAPDを使って-14dBm。PAM4ですので受信マージンは少ないし、コネクター接続損失などを考えると無理かな?60Kmくらいならいける?