本来は光トランシーバー用のSFP+ポートを、最近利用が増えてきた2.5G/5G-Tに接続できるようになる10G-T rate matchトランシーバーWST-SFP+CucRM-Cは発表以来好評で大口の注文は無いものの様々な顧客から注文を頂いています。そもそもUTPでの接続が多いのであれは初めからUTPポートを備えたイーサネットスイッチを手配するでしょうから大口の注文がないのは自然です。

SFP+ポートを備えるスイッチの最後の1ポートに差しておくとか、note PC用のUSB 2.5G-Tアダプタと一緒にカバンの中に入れておくのがお勧めです。とても使い勝手が良いトランシーバです。

しかし、スイッチ側には10GBASE-SRであると”騙す”実装ですので欠点もあります。

  1. 10Gbpsでは30mしかサポートしていない
    IEEE802.3anではCat 6AのUTPで最大100mが10GBASE-Tの仕様です。しかし、本製品ではShort reach modeと言われる30mまでしかサポートしていません。主な理由は消費電力で、30mの制限をしても3.3V 700mA(2.3W)前後、最大900mA(3.0W)と光トランシーバーと同等のSFP+(SFF-8472)power level 3 2.0Wを超えています。
    現在開発中の後継モデルではより消費電力が抑制される見込みです。
    距離制限に関してはwifi APなどを接続する場合は2.5G or 5Gであり、10Gで接続するのはサーバーで有りラック内の配線に収まるためにあまり運用上問題にはなっていないと思われます。
  2. link speedを判別できない
    RJ-45ポートを備えている10G-T対応のスイッチの多くはLEDの点滅パターンや色で1/2.5/5/10Gいずれのlink speedでlinkしているか判別できる様になっているのが大半です。また、CLIやGUIなどでもlink speedが確認できます。
    Rate Matchではスイッチ側とは10Gbps固定ですので、スイッチ側では実際にどのスピードでlinkしているのかトランシーバー内部のレジスタを参照する追加実装をしない限り把握できません。また、トランシーバーにLED等の表示機能もありません。
  3. 内部バッファーの溢れを認識できない
    トランシーバー内部で帯域差が生じているため、バッファーを内部的に有しています。TCPなどのフローコントロールを備えているトラフィックフローであればこのバッファーが溢れることはありませんが、UDPで音声や映像などの広帯域のデータが流れてきた場合はバッファーが溢れる可能性があります。しかし、溢れた情報はスイッチ側では認識できませんのでスイッチのインターフェースが備えるバッファー溢れのカウンターには反映されません。経路上のどの段でパケットロスが発生しているのか追跡するときに障害となります。
    buffer sizeは16Kbytesです。

やはり、SFP+ポートは本質的には光トランシーバーの為の仕様でありUTPそれも、10Gbps以外での利用は付帯的であり様々な制限があるのです。


SFF-8472 Power Level

  • Power level 1 : 1.0W max
  • Power level 2 : 1.5W max
  • Power level 3 : 2.0W max
  • Power level 4(3+)

SFF-8431にpowr class IIIが追加されたのはrev 4.1(2013-06-20)

SFF-8431の置き換えであるSFF-8419 Rev 1.0 (2015-03-31)でPower level 3が追加

SFF-8472 Rev 11.9(2014-08-14)でPower level 3 plusが追加

IEEE802.3anの会合では2005年11月にshort read modeを採用することが棄却されましたが、当時の実装技術でfull specの100mを実現するには10Wの消費電力が必要であり。IEEE803.an-2006ではshort reach modeが含まれています。

http://www.ethernetalliance.org/wp-content/uploads/2011/10/static_page_files_127_10GBASE_T2.pdf

2005年当時の見通しでは65 nmプロセスのチップであれば、100m時に7.0W。その次の40 nmプロセスで5.0W。2020年に実際の製品は28nmプロセスで2.5W、30mであれば1.5W。

次世代の12nmプロセスであれば100m時でも2.0Wを下回るでしょう、

実際の製品としては、Marvellが2020年12月に12nmプロセスで8ポートの10GBASE-Tをサポートする88X3580を発表しています。8ポート用ですのでトランシーバーには使用できませんが複数の10GBASE-Tを備えるスイッチ側ではこの製品を使用する事により80m link時でもポート辺り2.0Wを下回る消費電力が期待できます。

vendor PN プロセス技術 発表年 PHY ID
broadcom BCM8481 65 nm 2008年5月  
Broadcom BCM84821 65 nm 2009年  
Broadcom BCM84831 40 nm 2011年5月  
Broadcom BCM84851 28 nm    
  BCM84861 28nm 2014年12月  
broadcom BCM84881     0xae025150
broadcom BCM84891 28 nm   0x35905080
Aquantia AQR113     0x31c31c12
Marvell 88X3310 28 nm 2015年? 0x002b09a0

Aquantiaは2019年にMarvellに買収された


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