FOE2020では久しぶりに来場者の皆様と会話ができて楽しかったです。色々な話題がありましたが、やはりQSFP28による100Gbpsの次のどうなるかという話は皆さん興味があったようです。
私の答えは「100G CWDM4 QSFP28の天下は当分続く」です、その理由は56Gbps SerDesへの移行が遅れそうだからです。イーサネットスイッチはここしばらくはマーチェントシリコン、具体的にはBroadcomのTridentとTomahawkが方向性を決めていると言って過言ではありません。容量面ではTomahark、機能面ではTrindetのロードマップが高い確度で未来を決定していたのです。時々スケジュールは遅れますけど。
その中で、2017年12月に発表されたTomahawk 3が56Gbps SerDesを主軸とした仕様であったことから、QSFP28の時代は終わり次のSFP56/QSFP56-DD(QSFP-DD)の時代が到来したと普通考えられました。
コード名(通称名) | 発表日 | SerDes構成 | ファブリック容量 |
---|---|---|---|
Tomahawk | 2014年09月 | 28Gbps x 128 | 3.2T |
Tomahawk2 | 2016年10月 | 28Gbps x 256 | 6.4T |
Tomahawk 3 | 2017年12月 | 56Gbps x 128 | 12.8T |
Tomahawk 4 | 2019年12月 | 56Gbps x 256 | 25.6T |
56Gbps SerDesのファブリックチップを素直に実装すれば、トランシーバーのインターフェースも56Gbpsを束ねたものになり、SFP56(50Gbps) / SFP56-DD(100Gbps) / QSFP56(200Gbps) / QSFP56-DD(400Gbps)のいずれかになるはず。
これを受けて、100Gbpsの伝送方式は100Gbps一波が主流になり100G DR/FRのSFP56-DD(DSFP56)だろうと。
この予想を壊したのが、2019年3月に発表されたEdgeCore MINIPACK AS8000とARISTAの7368X4です。ファブリックチップは予想通り前年末に発表されたTomahawk3を採用しているのですが、ラインカード上に56Gbpsを28Gbps x 2に分割するGEARBOXを備え、QSFP28を最大128ポートサポートする箱です。
ファブリックチップの世代は変わっても、トランシーバーの世代は変わらずQSFP28を使われる事を示しています。
何故、このような箱が登場したのでしょうか。2019年3月のOCP SummitでのFaceBookの講演では、ファイバーの芯数の増加と伝送レートの増速は交互で行っていること。今は、ファイバーを増やすタイミングで400Gの容量を確保するためには100Gを4本使用する構成を選ぶ。現状では400Gのトランシーバーのコストは100Gの4倍を大幅に上回りコストパフォーマンスが悪いとの事でした。
2020年11月現在100G CWDM4のQSFP28の弊社希望小売価格は5万円を切っており、千単位のロットオーダーの実売価格は当然これよりも安価です。これの4倍で400G FR4、もしくは同価格で100G FRは確かに見通しがついていません。
100G FRのコスト構造を考えると56Gbpsのレーザー、PAM4回路、GEARBOXの三つが主な要因です。何れも市場に登場したばかりの新部品です。レーザーは100G CWDM4の四個から1個に大幅に減りますので将来的には安くなる可能性があります。PAM4も400G FR4と共通部品ですし。GEARBOXも電子回路ですので量産効果が効きやすく将来的には安くなるでしょう。しかし、SFP56-DDパッケージにしてもGEARBOXは必要であり本格的価格が下がるのはさらに次の世代の112Gbps SerDes対応のSFP112になるでしょう。
LD | PAM4 | GEARBOX | |
---|---|---|---|
100G CWDM4(QSFP28) | 28Gbpsx4 | 無し | 無し |
100G FR(QSFP28) | 56Gbps x 1 | 有 | x4有 |
100G FR(SFP56-DD) | 56Gbps x 1 | 有 | x2有 |
100G FR(SFP112) | 56Gbps x 1 | 有 | 無し |
QSFP28の100G CWDM4が当分続くとなると、COBOやco-packageのスケジュールもずれ込むのでしょうか。Broadcomは2019年12月にはTomahawk4を発表しましたし競合他社も同規模のファブリックチップを開発していますのでこれらを使用した箱の登場は粛々と進むでしょう。
この時に、QSFP28では消費電力が上がりすぎて運用が難しいと言う話になると単純な回線容量当たりのコストだけの判断ではなくなってきますので3年後くらいに一気にco-packageに動く可能性があると考えています。OCP2020はキャンセルされOFC2020は縮小開催だったので動向がつかみにくい2020年ではありました。しかし、2019年のOCP Summitで消費電力とそれに伴う熱管理に関する話題が多かったと印象に残っています。
QSFP-DDはマイナーな存在になってしまうのでしょうか。順当な仕様ですので対応する製品は多く登場するでしょうし、400Gを実現するために幅広く利用されるでしょう。それでも、現在の100G CWDM4の様な大フィーバーにはならないと考えています。400G ZR+は大騒ぎでしょう。
Links
OCP Summit 2019でのFaceBookのKeynote
OCPSummit19 - Scaling to a Larger Bandwidth Network with MiniPack - Presented by Facebook
https://www.youtube.com/watch?v=KKIVEj-YbiU
Broadcomの400GbE Reverse Gearbox
https://docs.broadcom.com/doc/81724-PB100